疾患
急性腰椎捻挫 / 慢性腰痛
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この疾患を正しく知る
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SART の視点:なぜ起こるのか
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手術と SART:競合ではなく補完
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研究エビデンス
本トピックに割り当てられたエビデンス候補です。引用する文献はページ公開時に著者が確定します。
- EV-071★★★★★L1 · システマティックレビュー / メタアナリシス
脊椎マニピュレーション治療は慢性腰痛に対して他の標準治療と同等の効果をもち、かつ安全である
コクランのシステマティックレビューは、脊椎マニピュレーション治療(SMT)が慢性腰痛に対して他の推奨治療と同等の効果と安全性を示すとした。
Rubinstein SM (2019) · Benefits and harms of spinal manipulative therapy (BMJ 2019, Cochrane)
限界 — これはSMT一般のエビデンスであり、特定のSART手技を検証したものではない。
- EV-050★★★★L2 · ランダム化比較試験 / 前向きコホート
腰痛では、深層安定筋の先行的(フィードフォワード)活動が遅れる、または失われる
通常、腹横筋と多裂筋は四肢の運動に先立って活動し(フィードフォワード)、脊柱をロックする。腰痛ではこの先行的活動が遅れ、深層筋が抑制され萎縮する。
Hodges PW (1996) · Inefficient muscular stabilization of the lumbar spine (1996) and related work
- EV-051★★★★L2 · ランダム化比較試験 / 前向きコホート
慢性腰痛はしばしば、組織損傷ではなく不適応な運動・認知・恐怖の問題である
認知機能療法は、痛みの回避による不適応な運動パターンを、恐怖や信念とともに分類し治療する。痛みは組織よりも行動と認知の産物でありうる。
O'Sullivan P · Diagnosis and classification of chronic low back pain; RESTORE trial and related work
限界 — CFTはSARTとは異なる(非構造的な)アプローチをとる。ペインサイエンスの共通基盤としてのみ引用し、SARTの結論に引き寄せない。
- EV-069★★★★L2 · ランダム化比較試験 / 前向きコホート
能動的な自己矯正(運動)が実際にカーブと機能を改善するというデータがある
能動的な自己矯正運動が側弯症と腰痛のカーブと障害を改善するというランダム化臨床エビデンス。
Monticone M (2014) · Active self-correction (2014) and related work
- EV-079★★★★L2 · ランダム化比較試験 / 前向きコホート
多くの椎間板性の痛みは、特定方向(伸展)の運動によって中心化し改善する
椎間板性腰痛では、反復する伸展運動が脚へ放散する痛みを正中へ引き戻し(センタライゼーション)改善させる——方向の好み(ディレクショナル・プリファレンス)の概念で、自己治療体系(MDT)へと発展した。
McKenzie R · Treat Your Own Back; the MDT research literature
- EV-004★★★L3 · 後ろ向きコホート / 症例対照 / 横断研究
脊柱の痛みでは、深層の安定筋が神経学的に抑制され構造的変化を起こす
腰痛患者では多裂筋などの深層安定筋に横断面積の減少、脂肪浸潤、神経学的抑制が認められる。固着下では脳の防御的指令により深層筋が過緊張ないし機能喪失に陥る(分節性ファシリテーション)。
Korr IM; Hodges P et al. · Korr IM (segmental facilitation); Hodges P et al. (core stability, multifidus); MRI studies on multifidus fatty infiltration
限界 — 多裂筋の脂肪浸潤を定量化した最新の画像研究(PMID付き)の追加が今後必要。
- EV-070★★L4 · 屍体 / 生体力学モデル / 基礎実験
腰椎前弯を保ってこそ、椎間板の圧が均等に分布する
腰椎前弯が保たれると圧が椎間板全体に均等に分散し、前弯が失われると特定の領域に圧が集中することを示す荷重分布モデル。
Müller A (2021) · Load distribution in the lumbar spine
- EV-002★★L4 · 屍体 / 生体力学モデル / 基礎実験基盤的
ある分節の固着が隣接分節の代償性の過可動を招き、中間帯が非対称に拡大して痛みと変形に至る
脊柱の安定は受動(骨・靱帯・椎間板)、能動(筋)、神経制御の三つの協調で保たれる。損傷や変性の後に異常拡大するのは全可動域ではなく中間帯(ニュートラルゾーン、抵抗なく動く初期の範囲)であり、その緩んだ区間が痛みの発生源となる。固着した分節が動かないと、隣接・脆弱な分節が過剰に代償し、その中間帯が広がる。
Panjabi MM (1992) · The stabilizing system of the spine I·II (1992); Clinical spinal instability and low back pain (2003)
- EV-020★★L4 · 屍体 / 生体力学モデル / 基礎実験基盤的
筋膜は身体最大の感覚器官であり、層間の滑走が妨げられると痛みと機能障害が生じる
筋膜は層構造をなし、層の間をヒアルロン酸が滑走させる。この潤滑が枯渇(固着)すると滑走が妨げられ、痛みと感覚異常が生じる。解剖学的研究により、筋膜は豊富な感覚神経支配をもつ感覚器官であることが確立された。
Stecco C (2015) · Functional Atlas of the Human Fascial System
- EV-021★★L4 · 屍体 / 生体力学モデル / 基礎実験基盤的
呼吸はガス交換にとどまらず、腹腔内圧を通じて脊柱を支える
横隔膜・腹壁・骨盤底が生み出す腹腔内圧(IAP)が、脊柱を内側から支える柱として働く(発達運動学、DNS)。呼吸パターンが崩れるとこの支持が失われる。
Kolar P · Clinical Rehabilitation of the Locomotor System (DNS)
- EV-029★★L4 · 屍体 / 生体力学モデル / 基礎実験基盤的
腰椎は反復する屈曲とねじれによって損傷し、ニュートラルを守る必要がある
損傷した腰椎は屈伸の反復と累積負荷で悪化する(スパイン・スペアリング)。屈曲とねじれの組み合わせが線維輪損傷の中心である。
McGill S (2002) · Low Back Disorders
- EV-031★★L4 · 屍体 / 生体力学モデル / 基礎実験基盤的
脊柱分節の固着は、その分節の神経系を過興奮(ファシリテーション)状態にする
関節機能障害が該当する脊髄分節を持続的な過興奮状態(分節性ファシリテーション)に保ち、わずかな刺激でも過剰な筋・自律神経反応を生じさせる。これが内臓体性反射・体性自律反射のメカニズムである。
Korr IM (1947) · The Neural Basis of the Osteopathic Lesion
- EV-049★★L4 · 屍体 / 生体力学モデル / 基礎実験基盤的
神経系の感作は痛みを増幅し、痛みは組織損傷に比例しない
神経系の機械的感受性と中枢性感作を臨床に導入した。痛みは組織損傷の量ではなく、神経系による脅威の評価の産物である。
Butler D (2000) · The Sensitive Nervous System
- EV-077★★L4 · 屍体 / 生体力学モデル / 基礎実験基盤的
椎間板が受ける圧は姿勢によって著しく変わる(座位は立位を上回る)
生体の腰椎椎間板内圧を姿勢別に直接測定した。座位——とくに前屈座位——は立位より椎間板圧を大きく高める。
Nachemson A (1960) · Lumbar intradiscal pressure
- EV-086★★L4 · 屍体 / 生体力学モデル / 基礎実験基盤的
画像が正常でも、機能(動き)は破綻しうる
機能診断は、X線などの構造画像が正常でも分節性の機能障害——運動の制限や過剰——が存在しうることを確立した。
Dvorak J & Dvorak V · Manual Medicine: Diagnostics
- EV-091★★L4 · 屍体 / 生体力学モデル / 基礎実験基盤的
腰痛は脊柱の問題であると同時に、その人の人生(心理・社会)の問題でもある
生物心理社会モデルは腰痛を組織損傷と心理社会的要因が共同で生み出すものとみなし、恐怖や回避などの非器質的要因が慢性化に大きく関与するとする。
Waddell G (2004) · The Back Pain Revolution
限界 — SARTは構造の軸で扱うが、このモデルは痛みが構造だけに還元されないことを警告する——過度な構造主義への戒めとして引用する。
- EV-015★L5 · 専門家の意見 / 古典理論 / 機序仮説基盤的
固着した分節の隣の脆弱な分節が過剰に動いて代償する(相対的柔軟性)
身体は硬い分節を動かす代わりに隣接する柔軟な分節を過度に動かし、そこに損傷が蓄積する(運動機能障害症候群、相対的柔軟性)。
Sahrmann S · Diagnosis and Treatment of Movement Impairment Syndromes
- EV-055★L5 · 専門家の意見 / 古典理論 / 機序仮説基盤的
痛みは特定方向のコントロールの喪失(アンコントロールド・モーション)から生じる
動きが制御されていない方向を見つけ、その方向の安定性を再教育する。全体筋と局所筋の役割を区別する。
Comerford M (2001) · Functional Stability Re-training
- EV-078★L5 · 専門家の意見 / 古典理論 / 機序仮説基盤的
関節には随意には作れない微細な遊び(ジョイントプレイ)があり、その喪失が機能障害となる
正常な関節機能に不可欠な微細な副運動(ジョイントプレイ)を明らかにした。この遊びが消える(固着する)と痛みと機能障害が生じる。
Mennell JM (1964) · Joint Pain
- EV-083★L5 · 専門家の意見 / 古典理論 / 機序仮説基盤的
本当の治療は、治療室の外での能動的なリハビリで起こる
受動的な治療を超えて、患者自身の能動的な運動と自己管理によって再発を防ぐ脊柱リハビリの体系。
Liebenson C (1996) · Rehabilitation of the Spine